【技能実習】Q32:問題が多い技能実習生を解雇できますか。

2021/07/13

Q&A 運用要領 実習実施者 労働基準法

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回答

技能実習生は、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、解雇することはできません

逆にいうと、やむを得ない事由があれば解雇することが可能となる場合があります。

「技能実習生が気にくわないから解雇したい」これはもちろんダメです。

ただし、技能実習生に問題があることもあると思います。


以下、その考え方と対処方法を解説します。

そもそも解雇とは

解雇というのは、使用者から一方的に雇用契約を解除することをいいます。

お互いの話し合いにより契約を解除することや使用者からの退職の勧奨に応じること解雇とはいいません

解雇について法律は?

解雇に関する法律としては、

○解雇の手続き(労働基準法)
○そもそも解雇が有効か無効か(労働契約法)

の2つの問題があります。

労働基準法

解雇の手続きを定めているのが労働基準法第20条です。

1 30日前に予告する

2 予告ができない日数分の解雇予告手当を支払う

労働者を解雇使用とする場合の手続きだけを定めています。
手続き面でのトラブルとしては、「解雇かどうか」という点で争いになる場合が多いです。

「辞めてくれないか」

という言葉は使用者が「退職を勧奨」したつもりであっても、労働者は「解雇」と受け取ります。

労働者としては、退職では失業保険の待機期間が長かったり30日間の準備期間がなかったりで不利な状況となるし、自分が辞めるつもりなかったのに辞めなければならなくなったのだから解雇だと主張することになります。

解雇するつもりがないのであれば「あなたの方から辞めてくれないか」とか「お互いに契約関係を解消しよう」という誤解がないような言い方をしたり、話し合いのやりとりを記録に残しておいたりした方がトラブルを避けられます。

いずれにしろ、解雇の手続き面は予告か解雇予告手当支払でクリアできます。


労働契約法

労働契約法では、解雇の無効等について次のような規定があります。

第16条 
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、そ
の権利を濫用したものとして、無効とする
    
第17条
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。 

労働契約法は法律違反を取り締まるための法律ではなく、守るべきルールを定めた法律なので、「合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の具体的な解釈は示されていません。

最終的には裁判等ではっきりさせることになります。

実務的にどのように考えたらいいかというと、争いとなったときに勝てそうかどうかが目安です。つまり、10人いたら8~9人は「相当である」と思うこと考えられる線としておけば争いとなっても耐えられるのではないでしょうか。

技能実習は期間の定めのある労働契約を結んでいます。

そのため、「やむを得ない事由がある場合」でないと、解雇はできないことになります。

「やむを得ない事由」とは、期間満了を待てないぐらい直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由がある場合と解釈されています。

有効な解雇をするためは、「合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められ」かつ「期間満了を待てないぐらい直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由がある」場合をクリアすることが必要です。

解雇を避ける

まず、解雇を考える状況になること事態を避けなければなりません。そのためには

1 面接をしっかり行う

しっかりと技能実習に誠実に取り組み、良い関係を築ける技能実習生を採用できれば、解雇するようなことにはならないということです。

技能実習生とは少なくとも3年間は雇用契約を結びます。賃金だけでなく諸々の費用も考えたら、1,000万円近くを技能実習受け入れにより支出することになります。

それだけの費用を支出するのだから、技能実習生の選択は慎重に行うべきだということです。

技能実習期間だけではなく、ずっと交流できるような人を選べれば、解雇で悩むことなどないでしょう。

2 コミュニケーションを密にする

解雇を考えるような状態になるということは、技能実習生はもう実習に嫌気がさしている状態だと思います。

そのようなところまで行く前に、技能実習生とのコミュニケーションを密にして、小さな不満の芽のうちに解消していけばいいということです。

3 監理団体を頼る

実習実施者が様々な取組を行っても、技能実習生との関係が修復不可能なところまでいってしまった場合、解雇だけが解決方法ではありません。

技能実習生の実習継続意欲がまだあるのであれば、実習実施先を変更することで解決できるかもしれません。

監理団体に状況を説明し、実習先変更が可能であれば両者の合意退職という形をとれることもあります。

解雇は絶対に禁止か?

技能実習制度運用要領の留意事項で、

技能実習期間の途中での中止は、倒産等のやむを得ない事情がある場合を除いては、実習実施者や監理団体の一方的な都合によるものであってはなりません。

 という記載があります。

ここから、実習実施者の一方的な理由ではなく、技能実習生が会社のルール違反を繰り返したり、大きな問題を起こしたりといった本人が著しく悪い場合の解雇は、明確に禁止してされている訳ではないと読み取れます。

技能実習生に対しても労働契約書及び雇用条件書(参考様式第1-14号)において、    

Ⅷ.退職に関する事項
2.解雇の事由及び手続
解雇は、やむを得ない事由がある場合に限り少なくとも30日前に予告をするか、又は30日分以上の平均賃金を支払って解雇する。技能実習生の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、所轄労働基準監督署長の認定を受けることにより予告も平均賃金の支払も行わず即時解雇されることもあり得る。

として伝えています。

技能実習生に対する解雇は、実習実施者としての最終手段です。「やむを得ない」と判断されるまでに、段階的に会社の就業規則の懲戒の手順定めるとおり、改善のための努力を尽くさなければなりません。

例えば就業規則では次のように懲戒ルールを定めているのが普通です。
1 けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
2 減給
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
3 出勤停止
始末書を提出させるほか、 日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
4 普通解雇
労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
① 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
② 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
③ 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
④ 懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
など
5 懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。
① 正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及ぶとき。
② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。
③ 過失により会社に損害を与えたとき。
④ 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。

これらの段階を踏み、逐一記録に残しましょう。

最悪のケースは散々我慢して堪忍袋の緒が切れてしまうことです。

技能実習生からは「今まで何も言われたことがない」と主張されてしまいます。

悪いことは悪いと指摘し、改善を段階を踏んで改善を促した記録が「やむを得ない」と主張するときに証拠となってくれます。

なお、就業規則がない場合は、就業規則に準じてあらかじめペナルティのルールを定めていなければ、後出しで罰することはできません。

モデル就業規則を参考に作成しましょう


【技能実習】使える資料リンク集
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就業規則(変更)届・意見書様式 出典:北海道労働局ホームページ (https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/home.html) クリックするとダウンロードが始まります ...
https://www.happier.work/2021/07/blog-post.html

「解雇ルール」を伝えるのもダメなケース

技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならないことになっています。(技能実習法第48条第2項))

これに違反して技能実習生に対し、解雇などの不利益を示して、

○技能実習が行われる時間以外における他の者との通信や面談
○外出の全部又は一部を禁止

する旨を告知した者は、「6月以下の懲役又は3 0 万円以下の罰金に処する」と定められています。(技能実習法第111条)


 まとめ

日本人でも労働者を解雇することは大変です。

企業が周到に準備していないと裁判となっても勝てません。ましてや技能実習生であれば、そのハードルはより一層高くなります。

トラブル防止のために

○面接等をしっかり行い、良い関係を築ける技能実習生を受入れること
○解雇=帰国ではなく、実習実施先変更での対応もあり得るため、解雇を考えた段階で監理団体に相談すること
○第三者が「解雇しかないよね」と同意するような、改善を促した経過を記録として残すこと
○労働基準監督法の手続き(30日以上前の予告or解雇予告手当)は守ること

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