【技能実習】会計検査院発表資料でわかった外国人技能実習機構のこと

2021/07/22

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 はじめに

先週、ニュースで外国人技能実習機構を会計検査院が調べた報告が報道されていました。

どんな内容なのか会計検査院のホームページで確認したところ、「外国人材の受入れに係る施策に関する会計検査の結果について」という資料があったので、一通り目を通してみました。

その資料に外国人技能実習機構が今まで公表していなかったデータがいくつか確認できたので記録しておきます。


全国の実習実施者数

機構の統計資料では認定件数しか確認できず、受入れ企業数は機構が設立当初から発表している資料の「約48,000社」としか判っていませんでした。

それが今回の資料に「実習実施者届出書の提出件数」が掲載されていたので、令和元年度末の実習実施者数が66,249件と判明しました。

1号技能実習生のみの受け入れや、途中で受け入れをやめたなど誤差があるとは思いますが、約66,000社が令和元年度末現在の実習実施者数と考えていいと思います。

新制度が始まってから、実習実施者が4割近くも増加していたということですね。


出入国在留管理庁との連携

機構は出入国在留管理庁から入国情報の提供を受けていたということが判りました。

これがあるなら、実習実施者届出書なんか不要なんじゃないかなと思いました。

実習実施者届出書は技能実習を開始したという届出より、実習実施者届出番号の交付を受けるために行うという印象が強いです。

入国を把握できていたのであれば、入国を確認した段階で実習実施者番号を発行してくれれば便利だし、機構としても督促の手間も不要になって良かったのではと思ってしまいます。

まぁ、だらしない会社や監理団体をあぶり出すために届出制としているのかもしれませんが、それだったら督促せずに、検査で厳しく指導しなきゃダメじゃないかと思います。


機構の職員数

技能実習法を国会で審議しているときに、「機構は本部80名の地方250名で立ち上げる。実地検査は3年で実習実施者全数に対して行う予定」なんて答弁がありました。

本当にそんなこと約束して大丈夫なのかと思っていました。

あの当時で22万人の技能実習生の認定申請と約48,000件の実習実施者と2,000件の監理団体の実地検査を330名で行うという意味です。

それを聞いたほとんどの人が「無理だ」と思っていました。

実際の機構の職員数が今回の報告の添付資料にあって、中身をみて実際どうだったのかが判ってしまいました。内容は笑ってしまいます。

○平成28年に92名の定員で機構の立ち上げ作業を行うところ、37名で行う

(本部に全国13カ所の事務所をこの人数で4ヶ月で立ち上げた!)

○平成29年に346名の定員で業務を行うところ146名で行う

(認定まで時間がかかって待たされたはずだ!)

○平成30年にやっと定員充足したが、技能実習生は平成28年の1.5倍となる

(認定件数が予想の1.5倍となっているのに定員見直ししなかった!)

○令和元年に587名に定員増加したが、年度末まで充足できず

(失踪対策で大幅に職員増加したけど、採用基準を下げたと書いている。素人増やしても仕事する人の業務量は当面減らないよね・・・)

令和元年でやっと本来の技能実習生数に応じた定員数になったのでしょうか。それまでがいかに無理難題を押しつけられていたのかが判る数字です。

実地検査を担当する指導課の職員数も資料にありました。

○平成29年は159名の予算に44名

(2,000件の監理団体許可に44名で対応とは!)

○平成30年は103名に予算が減って128名

(何で予算減らすのか。2,000件の監理団体実地調査に128名で対応とは!監理団体の実地調査は人数投入して厳しくやろうよ!)

○令和元年度は241名の予算に170名

(実地調査の人員は身元がしっかりした人を選ばなきゃならないから難しいのかもしれないけど、予算したならちゃんと採用しようよ!)

と何を考えて運営しているのか判らない状態です。

この指導課は監査報告書の届出先になっているので、平成30年は65%が新人の128名で20万件超える監査報告書を処理し、9000件の実地検査を実施していたとは驚きです。

今は3,350件の監理団体を毎年1回、68,000件の実習実施者を3年間で全数、これを224名(本部込み)とは欲張りすぎですね。


システム追加

機構は、今後、監査の実施状況や監査報告書の提出状況に問題があるおそれのある監理団体を自動的に抽出する機能を業務システムに追加する予定と書いてありました。

毎年監理団体に検査に行ってるんだから、機構も問題ある団体は十分に判っているでしょうに。

これをわざわざお金をかけて自動判別させてどうするのでしょうか。

きっと機構の本部に無能な働き者がいるんだろうな。

そんなことより、紙ベースで中身の薄い監査報告を求めることをやめるべきじゃないでしょうか。

68,000件の実習実施者に対する3か月に1回監査報告だと、これだけで272,000件の報告書を職員での処理が必要です。これだけで実地検査に出て行く余裕なくなってますよね。

どうせお金をかけるなら、機構で監理団体の標準監査実施マニュアルでも作成して監理団体にしっかりと実習実施者をチェックさせ、機構は監理団体の手抜き監査があれば厳しく実地検査で指導するのが現実的ではないでしょうか。

 おまけ

会計検査院もよく知らない業務について、ちょっとだけ資料を見て問題を指摘しなければならないのだから大変です。

今回は実習実施者届出書と失踪があった実習実施者について指摘してます

会計検査院の所見

ア 技能実習機構において、出入国在留管理庁から提供を受けている入国情報を活用して、技能実習を開始しているのに実習実施者届出書を提出していないおそれのある実習実施者を適時適切に把握すること。そして、実習実施者又は監理団体に対して実習実施者届出書の提出の督促を効率的に行うこと

イ 技能実習機構において、技能実習生の行方不明事案が発生した実習実施者に対する機構実地検査を速やかに実施できない場合には、速やかに客観的資料を入手すること

実習実施者届出書は実習実施者届出受理番号発行のためにある書類なので、実習実施者届出受理番号がなければ後々困るのが監理団体と実習実施者です。しかも1回のみの手続きです。

機構としてはそんなに力が入っていない書類だろうに、会計検査院の手前、手間をかけてチェックするようになり、優先すべき仕事に手が回らなくなるということですね。

失踪事案の実地検査の実施判断には、過去の検査歴も重要な要素だと思いますが、会計検査院の報告にそのあたりのことは書いてありませんでした。

失踪前に一度も実地検査を実施していない実習実施者はすぐにでも実施すべきだと思いますが、過去に検査を実施していて、大きな問題がなかったと判断されたところまで一律に客観的な資料を入手しろという会計検査院の考えと読めます。

会計検査院のおかげで困難時届のときに追加で添付させられる書類が増えるということにならなければいいですね。

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 労働災害防止、外国人技能実習、労使紛争解決援助、各種ハラスメント防止、男女雇用機会均等などのスペシャリストです。

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